シェーン・バウアー『アメリカン・プリズン』(2020)東京創元社
副題は「潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス」というだけあって、著者が潜入して感じた問題はすべて収益構造に組み込まれます。
刑務所と監獄の違いは労働があるかないか。アメリカでの刑務所の成立過程が興味深いです。綿プランテーションや道路建設に従事させていた奴隷が解放されたため、無賃労働者の穴埋めが必要になりました。そこで微罪で刑務所へ送り、囚人貸し出し制度の名のもと各種労働をさせていました。
ドラマ『プリズン・ブレイク』は建築家の弟が刑務所の設計図をもとに兄を脱獄させるべく、自ら投獄され所内のハラハラドキドキを楽しむ物語でした。
本書を読むとそこまでしなくても脱獄できる刑務所もあるのだなと感じます。
マフィアのボスが刑務所内で好き勝手している映画が良くありますが、囚人看守というそうです。看守の人員が足りないので、囚人の中から一番凶悪な者を選び一部看守業務をさせます。その代わりに便宜を図るというわけです。
著者が潜入した刑務所も人員不足です。外の運動場に移動させるための見張りが足りないので閉じ込めっぱなしだったりします。時給はスーパーと同程度なのでお金を持った囚人に容易に買収される人も多いようです。
結論は、経済性にはあらがえないという身も蓋もない内容でした。印象的だったのは経営者が各種批判に対して、もし(そのような)批判が本当なら政府から刑務所業務を委託されないでしょうということを言っていたことです。
問題点は簡単で、フィードバックが遠すぎるということだと思います。例えば、囚人の再犯率や死亡率などを委託報酬に連動させるなど、より近いフィードバックを設定すればより良い刑務所環境になると思いました。