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2019/12/02

デイヴィッド リンドリー著『そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命』2007



神は秩序の神であって混乱の神ではないーーアイザック・ニュートン
混沌は自然の掟であり、秩序は人間の夢であるーーヘンリー・アダムス
相反する2つのエピグラフから始まります。量子力学を誕生させた人々の知的であり哲学的な考察を数式を使うことなく詳細に説明します。

アインシュタインの相対性理論は観察者の場所によって時間が変わるというものです。絶対的だと思っていた時間が相対的になるのです。一見、秩序か混沌かで言えば混沌なような印象を持ちがちですが、GPSに代表されるように計算可能で秩序だっていると言えます。数式理解には『一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する』がわかりやすそうですが、私にはまだわかりません。

対してハイゼンベルクの不確定性原理をどうとらえるかで秩序から混沌へと進むかどうかが哲学的に決定されます。つまり量子の世界では物質の存在が確率でしか示せないということなのですが、不確定性原理を批判するためのシュレーディンガーの猫の例がわかりやすく説明されています。確率でしか示せないところを混沌ととらえます。確率が介在しなければ秩序です。

シュレーディンガーの猫は箱の中に猫を入れて穴から覗くと猫がいる場合といない場合があって、それが量子力学の不確定性原理だとウルトラ適当解釈が日常会話で繰り広げられます。理解している人も説明することはまれでしょう。猫・毒瓶・トンカチ・放射性物質・ガイガーカウンターが登場する例を探しましょう。

本書が読者を引き込むところは偉人たちの科学思想のみならずその生活思想まで明らかにしているところです。シュレーディンガーは愛人を複数作り、その子供が何人もいるそうです。
ハイゼンベルク著『部分と全体―私の生涯の偉大な出会いと対話』と合わせて読むことをおすすめします。ハイゼンベルクが配慮している点が本書では躊躇なく明かされます。

私はプランク、ゾンマーフェルト、アインシュタイン、ボーア、クラマース、ハイゼンベルク、ボルン、パウリ、シュレーディンガー、ディラックなどに人間味のある性格をイメージできるようになりました。

数学ができないため大発見に手が届かないことが多いようです。ボーアがすごいのはおそらく1番数学ができないのにクラマースなど数学のできる人と組むことで業績をあげ尊敬されているところです。

登場人物すべてがいわゆる先生ですが私が習いたい先生はゾンマーフェルトです。ゾンマーフェルトの既存の考えから柔軟に新しい考えへ移る身軽さは是非見習いたいと思います。語学堪能かつ数学に強いクラマース。数学に強く寡黙なディラック。一人残らずみんなすごいのです。