鹿島茂著『エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層 (ベスト新書) 』
核家族か大家族かの分類に遺産相続が平等かを加えた4分類で世界を分けてみると新しく見えるものがある。人口動態に相関があるのは経済状況ではなく女性の識字率であった。家族人類学者エマニュエル・トッドの考えを元に歴史のエピソードを解釈していきます。
誰と住むかは確かに生活の根源的な問題です。無意識であるものの自分の考えに多大な影響を与えているでしょう。その集合体である国家を占う上で参考になることは納得できます。本書では序章から第2章の前半でトッドの考え方を示します。後半の第3章以降はトッドの考え方を個別のエピソードに当てはめ解釈していきます。
識字率が上がると「世界の幼年期」が終わり人口増加が落ち着きます。第2章の最後では大いに盛り上げます。
「世界の幼年期」が終わるより前に人口爆発による環境汚染で、地球が終わってしまっている可能性も皆無ではないのです。『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』を読んでみると人口爆発も限定的でしょう。
後半は、大学の講義を元にしただけあって読みやすいQ&Aのエッセイ風にまとめてあります。著者の政策提言や問題解決方法の提案が示してあり、納得できるかは別としてその姿勢は評価できる点です。幾分乱暴な印象もあるのでトッドの書籍を読むきっかけになるかもしれません。