映画『プルートで朝食を』『ギリーは幸せになる』『家族の波紋』


フェリーニの『カビリアの夜』は娼婦が結婚詐欺で裏切られ絶望する状況であるにも関わらず、最後の笑顔で立ち上がるシーンで救われる映画でしょう。『プルートで朝食を』は『カビリアの夜』を観て単純にカタルシスを感じ満足してしまうのはダメだろうという映画でした。

教会に捨てられた主人公が生みの母を探すという筋なのですが「真剣」がキーワードになっています。全体的に音楽やファッションにおいてしゃれた映画です。辛い現実をウィットで受け流す格好良さがあるのですが、ことあるごとに主人公は「真剣」にと言われてしまいます。

鬱な人に頑張っては御法度だと思うなら、笑っているからと言って「真剣」になんて言えないなということです。



『ギリーは幸せになる』は実母と暮らしたい荒れた少女が主人公です。いざ実母と会うとまったく興味を持たれていません。結局里親家族が自分の家族だと悟る物語です。
実母との再会前後で主人公の態度が180度変わるあたりが1番盛り上がるところでしょうか。比べてしまうと『プルートで朝食を』の常軌を逸した主人公の行動の方がしっくり来てしまいます。


『家族の波紋』はアフリカへ旅立つ長男と母と長女が別荘に集まり、絵描きに絵を習いコックに食事を用意させ2週間淡々と過ごすも父は来ないという内容です。この記事の3作の中で1番現実的な演出です。笑いはなく誰も病気にもならず死にもしません。あるのは苛立ちと哀愁のみ。

画家を別荘まで呼びつけ、泊まり込みのコックを雇っているのでうすうす気がつくのですが最後にその裕福さに驚くことになります。ただ滞在中、やっていることと言えば絵を描いて食事をするだけです。

構成としては画家が不在の父代わりに長男へアドバイスします。アフリカ行きを迷う長男に対して「なんでも良いから自分の中でこれと思ったことに進めば良い。時間がかかるし失敗するかもしれないが、そういう生き方をすると良い」と。

母親は画家との会話で「子供を持つことを選んだ」と言いつつ夫との電話では「子育てを押しつけて」と怒鳴ってしまいます。

言いたいことはシンプルで、裕福な環境に流された生き方をしているようではダメですよ自分で考えて生き方選びなさいよということです。

長女が一番怒っている原因は長男が所与の環境に逆らい自分の考えで生きていく一歩を踏み出そうとしているなか、自分は踏み出せないでいるもどかしさがあるのでしょう。


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