映画『ヒトラーに屈しなかった国王(字幕版)』とハイゼンベルク著『部分と全体』
『ヒトラーに屈しなかった国王』公式サイト
https://kings-choice-jp.com/
ノルウェー映画です。書籍『部分と全体』の「革命と大学生活」でハイゼンベルクがプランクを訪ねナチスの影響下でどう対処するかを話します。
プランクは「とにかくあなたが決を下す際には、破局の後の来るべき時代のことを考えて下さい。」と結びます。ハイゼンベルクはドイツから移住すべきか留まるか迷いに迷ったあげく留まることにします。ちなみに、イタリアからアメリカへ移住したフェルミには猛烈に移住を薦められます。
程なくハイゼンベルクに召集令状が届き兵器局へ出頭することになります。この時はすでにオットー・ハーンが「ウラン原子に中性子をぶつけた際に、その結果として生じたものの中にバリウム元素を見いだした」あとでした。つまり原子爆弾への応用が期待されていました。
『部分と全体』の「政治的破局における個人の行動--1937-1941」でウランの核分裂が連鎖反応した際に解放される中性子を減速させるためにの物質として重水をあげています。なお、減速させて制御できると原子力発電所、制御できないで連鎖反応が爆発的に起こると原子爆弾という理解です。
ここまで長い前置きでした。当時ノルスク・ハイドロというノルウェーのオスロにある会社がヨーロッパで唯一の重水生産を行っていたそうです。ノルウェーを侵略する必要性があったのです。『テレマークの要塞』はこの工場の破壊工作を扱った映画のようです。
原題の王の選択という通り、国王は降伏するかどうかを決めます。エンドロールで国王はイギリスに退避しレジスタンスを指揮したこと、戦後祖国へ戻り熱狂的に支持されたことが示されます。ハイゼンベルクは自分だけ海外へ逃避することに抵抗を感じフェルミは亡命しました。国王はプランクの言うように「破局の後の来るべき時代」を考えた選択をしたということでしょう。
国王は国外へ逃避し戦後帰国した。などと要約してしまうと意味をなさないわけで、歴史を映画として要約することや映画を観て要約することの危うさが身に沁みました。