『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2017)アメリカ




一つ前の投稿でグランド・ジョーについて「コーンキングもの」と書きました。冬に枯れても、春また芽吹くように再びチャンスが巡って来る「円環」や「螺旋」の構造です。

悪い状態ではその先に、救いがあり希望がある一方、良い状態の先には、あきらめや絶望が必然的に巡って来るわけです。商業映画では、最後に「希望」をみせて「良い映画を観たぞ」と気持ちよくなりたい多くの私のために、ハッピーエンドになることが多いですが、本質的には「円環」なので良くも悪くも、ハッピーでもアンハッピーでもないはずです。

さて、今回観た『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はなかなか興味深い構造でした。
テーマとしては、「大きな失敗に対処可能か」「赦し」だと思いました。

あらすじとネタバレ

主人公は失火により子を亡くし、妻と別れ、町から距離をとって生活しています。幸せな家族生活を1本道で歩んでいたはずが、「大きな失敗」により妻と別れ、道が90度折れ曲がりそれ以上進めないような生活です。

兄が亡くなり、いやおうなしに町へ戻されてしまいます。
再会した元妻は、再婚し子供も生まれています。1度、我が子を亡くし道を外れたものの、道がクランクするように再び新しい生活を取り戻し前へ向かって歩んでいるような様子です。元妻は主人公と再会し、失火させてしまった主人公を赦します。

亡くなった兄は、一人息子を弟である主人公へ託します。妻は、アルコールが原因で別れ連絡も取っていないような状況でした。しかし、一人息子は密かにメールで連絡を取っていることが判明します。

では、母親とその一人息子は生活を共にできるのか?主人公は打診しますが、敬虔すぎるクリスチャンの夫に拒否されてしまいます。母はアルコールの失敗により道を外れたものの、再び別の道を歩んでいます。元の道を歩んでいる一人息子とは一緒に並んで歩けないのです。

最終的には、主人公は町に留まることができません。元妻も過去の失火を赦してくれましたし、兄の一人息子にも一緒の生活を懇願されますが、兄の友人夫婦の養子とすることを手配します。過去の過ちを吹っ切って、新たな生活を始めることはできなかったのです。周りからはそう求められても、自分を自分で赦すことができないという結末です。


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