映画『Locke/オン・ザ・ハイウェイ』(2014)主人公は本妻の子か浮気相手の子か?
映画『Locke/オン・ザ・ハイウェイ』(2013)を観てきました。忘れないうちに、観る上でのポイントを記しておこうと思います。例によって、ネタバレ全開です。
あらすじは、いろいろなところに載っていますし、上記予告を観ると大体わかるのですが、改めて箇条書きしてみます。
- 主人公ロックは、家族とサッカーの試合をテレビ観戦する約束をしている。
- ロックは、ヨーロッパ最大級のコンクリート基礎工事の現場責任者である。
- 家族の約束も、工事の立会いも破らざるを得ない状況で高速を飛ばしている。
- その状況というのが、43歳の女性が破水し、自分がその父親である。
- 浮気の責任を取って出産に立会い、その後認知するつもりである。
- バックミラー越しに、後部座席の父親と話すも、誰も座っていない。
- 父親は「逃げた」が自分は「逃げない」。失敗を修復するつもりである。
- 失敗とは、浮気で家族を傷つけたこと、欠陥コンクリート混入の可能性、浮気相手の子を認知しないことである。
その後、確実にわかるのは、本妻が浮気を許してくれなく家に戻ってくるなと言われ、子供を傷つけることになる点、浮気相手が無事出産に成功する点です。最終的には、どうやら父親と同じ失敗をしてしまったようです。
父は、本妻の家族から逃げた
さて、子供の視点で考えて見ます。本妻の子供からすると「父親は浮気相手の子供を認知し、自分たちから逃げた」といえます。一方、浮気相手の子供からすると認知してくれる訳で、「逃げていない」ということになるでしょう。すると主人公は、やはり本妻の子であり、父は浮気相手の元へ逃げたということになるでしょうか。
父は、浮気相手の家族から逃げた
父が浮気相手の子供を認知しなかった場合、主人公が浮気相手の子でありえます。そうだとすれば、自分は浮気相手の子を認知するので、「逃げていない」ことになり、父親の亡霊に打ち勝ったことになります。しかし、ラストの主人公の顔を見ていると、とても打ち勝った感じはしません。どちらかといえば、父と同じ結果になってしまって呆然としているようです。
父は、本妻・浮気相手両方の家族から逃げた
私の結論としては、父は両方の家族から逃げたので、主人公はどちらの家族からも逃げることのないように、まずは浮気相手の出産を優先し、それを本妻の家族に理解してもらい、仕事も上手く乗り切るべく頑張るものの結局、すべて失敗し父と同じになってしまうというものです。
おそらく、浮気相手の子を認知するつもりでいたものの、浮気相手から「愛している」といわれても「お互いのことを知らないので、そんなこといえない」と返事することからわかるように、結局子供を認知できないのではないでしょうか。
コンクリートの基礎に欠陥コンクリートが混ざると、その上の建造物はやがて崩壊するように、人生の基礎として父親の足跡を背負っている主人公の生活も崩壊してしまうのです。主人公がコンクリートのついた靴でキッチンの床を汚すのを妻がいくら掃除してもまた、足跡を残してしまうエピソードが象徴するように、父親の足跡は消えず運命として主人公に継承されてしまうのです。
父を殺して母を犯すオイディプス風にすべく浮気相手をあえて43歳に設定していると思えなくもないですが、特にそこまでこじつけることもないでしょう。
うだうだと書きましたが、観るときに注目したいポイントは、
- 主人公は父とどこが違うのか?
- 主人公は本妻の子か浮気相手の子か?
Ebisu Garden Cinema で前回観た『マミー』と対象的でなかなか良いラインナップだと思いました。低予算で作れそうな映画の中ではとても参考になる作品です。神の視点から登場人物が酷い目にあう『ソウ』などは個人的に低評価ですが、本作品は絶望的なテーマではありながら評価に値すると思います。『ガタカ』と『トゥルーマンショウ』の関係に似ています。
『マミー』の方がハッピーなので、どちらを観るか迷ったら『マミー』をおすすめしますが、『Locke/オン・ザ・ハイウェイ』も映像が綺麗ですし、映画館でみると真っ暗な中、車に乗っているようで没入感が心地いいです。ただ、ドラマ『24』のような事件は起きなく、浮気相手の出産に車を走らせているだけですので、ぼーっと観ていると、もう終わり?って感じかと思います。細部に注目し考えながら観てみてください。
20150822追記
上記考察は「なぜ主人公は妻への説得に自信を持っているのか?」に答えられていないので、より説得力のある答えに至りました。この映画では、最終的に主人公の妹の子供が産まれます。